杏ちゃんが亡くなりました
杏ちゃんは、
愛護センターに収容時にはもう怪しい腫瘍が太腿にあって、
回診の獣医師の見立てで、
あまり良くないやつと既に診断されていました。
看取り覚悟の引き出しは今まで何度もして来ていたので、
この小さな可愛こちゃんを引き取ることには何の抵抗もありませんでした。
引き取ってすぐほるん動物クリニックで検査をし、肥満細胞腫と診断されて、
彼女の残された人生に必要なものはなんだろうと考えた時に、
攻めに攻めた高度医療ではなく、
愛された記憶を餞にしたいと考えました。
常に多頭飼育の我が家で、
一預かり犬という立場でも精一杯愛するつもりではあるけれど、
犬嫌いな彼女はもっと、
濃厚に、彼女だけに愛を注ぐ環境が必要と考えました。
覚悟の預かり先を募り、
それに応えて下さったIさん。
ほるん動物クリニックの近所ということもあり、丁寧な通院と丁寧なケアと、一頭だけでのお嬢様生活。
杏ちゃんの人生の中でIさんのうちで過ごした半年は、彼女の人生を全肯定するに足り得る幸せな日々だったと思います。
Iさんがヘルニアを悪化させ預かりストップになった後、
杏ちゃんの腫瘍は自壊して、急変しました。その時にIさんには後数日以内の可能性もあるし、Iさんの今の体調を考えたら心配をかけるだけなので今後杏がどうなったかは私からは報告しませんねと告げました。
しかしそこから杏ちゃんは奇跡の回復を果たし、
決して良くはないけれど安定した日々を我が家で過ごしておりました。
数ヶ月後、
リンパが腫れ、肛門にも腫瘍ができ、全身に転移が見られ、胸水が溜まる事態になりました。
そんな時突然、Iさんから「ヘルニアだいぶ良くなりました、杏はどうしていますか」とご連絡をいただきました。
ずっと気にして下さっておりました。
亡くなっていることを覚悟して勇気を振り絞ってご連絡を下さったのです。
杏ちゃんの現状を伝え、
ほんの短期間でいいから、
最期過ごしてもらえないかとお願いをしました。
Iさんも、四日間限定での預かりを快諾。
数ヶ月ぶりのIさん宅。
杏ちゃんは覚えておりました。
Iさんも、Iさんの家族も、Iさん宅での暮らしも。
杏ちゃんの最期の4日間になりました。
この状況でもお散歩を楽しめ、
ご飯を食べ、一緒に寝れたそうです。
杏ちゃんの寿命はもうとっくに尽きていて、Iさんとの再会のために執念で命を繋いでいたのかなとしか思いないような最期でした。
律儀に、
健気に。
治る見込みのない疾患の犬を
保健所で処分に回さなかったこと。
間違ってはいなかった。
保健所の檻の中で処分を待つ老犬、病犬・・・
杏ちゃん、どうか安らかに。