ヂレ永眠しました
72歳の無年金の女性が飼育しており、市営住宅に引っ越すにあたり犬が不要になり行政に相談し
行政から別の保護団体を紹介され、その団体に引き取り依頼が入りました。
どこの団体も犬は常に満杯で、身勝手な人間の尻拭いを常にできるほど余裕はありません。
扱いづらい犬種で特に未去勢の雄犬でもあるためどの団体も用心をします。
ただ、明らかにネグレクトをされているであろう老犬を放っておくこともできません。
回り回って当団体に声がかかりました。
一刻も早く引き取って欲しいと飼い主の親族からの催促があったようです。
収入のない老人は親族の支援で暮らしていたようで
親族としても犬を一刻も手放してほしいものなのでしょう。
収入のない60歳はダルメシアンの子犬を買ってはいけない。
その犬が天寿を全うできるまで看取れるだけの経済力と体力を維持できない人間はその場の感情に流されて犬を飼ってはいけない。
引き取られてきた、かつてさぞ美しい犬であったであろう彼は
骨と皮の状態で肋骨が浮き上がり、筋肉が削げきった後ろ足はフラフラと心もとなく震えておりました。
ひどい歯肉炎で激臭のヨダレが止まらない顔で申し訳なくこちらを見てパタパタとしっぽを振りました。
そのまま病院に行って検査を行い、
ひどい腎臓病であることが判明しました。
血液検査の数値は非常に良くない。
即療法食管理と投薬が開始されました。
ただ、腎臓病の進行は食事改善と投薬でも止めることは出来ませんでした。
あんなにご飯が大好きだったのに突然ご飯を食べなくなり、あの手この手でいろいろなご飯を試し食べられるものを探しました。
最期の5日間は毎日自宅で補液の点滴もし、なんとか一日でも彼にとっての温かい日が続くように懸命に看護をしました。
雪の降る日でした。
一面の銀世界になったお庭に自分から出て、トイレを自力で済まし、
夜ご飯はプリンを平らげ豚肉を一切れ。
それが最期の食事になりました。
苦しんだのは数時間でした。
横倒しになって静かに呼吸をするヂレくんの手を握り横に布団を敷いて寝ました。
私がウトウトしていたその間に、静かに旅立ってしまいました。